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日本のこころ、和食の知恵シリーズ④ ~「もったいない」から生まれた「出汁の文化」
2015年02月20日
皆さん、こんにちわ。
三寒四温と言いますが、まさに3日ぶりの晴天、気持ちがいいです!(^^)!
暦の上では春ですが、まだまだ寒暖が繰り返して来ますので
油断せずに体調管理して参りましょう!!
さて、今回は日本のこころ、和食の知恵シリーズ④
《「もったいない」から生まれた「出汁の文化」》
という内容でお送りいたします。
「旨み」は「UMAMI」、日本発の世界共通語!!
「出汁」と言えば「旨み」ですね。
昆布のグルタミン酸、鰹節に含まれるイノシン酸、
干しシイタケなどに含まれるグアニル酸が有名です。
昆布のグルタミン酸ナトリウムを発見したのが日本人で
そのお弟子さんが鰹節のイノシン酸を旨み成分として発見
されたとのこと。
西洋料理の「出汁」にあたるフォンやブイヨンは動物の
肉や骨、野菜を丸ごと煮込んで灰汁をこまめに取り、
最後はキレイに漉してから使います。
ものすごく時間と手間がかかる料理なんです。
日本では昆布や鰹節でさっと出汁をとってしまう・・・
しかも、しっかりと「旨み」が出ている。
この事実を最近知った西洋料理のシェフたちは
こぞって日本に来日して昆布や鰹節の「出汁」の
勉強をしているとか・・・
「UMAMI」が世界共通語になるのもうなづけます。
出汁の前に「乾物」あり!!
鰹節や昆布、干しシイタケなどを出汁に使う場合、
どれも乾物に仕立てたものを使って出汁をとります。
前回のテーマ「乾物」が「出汁」として活用されるわけです。
生で食べようと思えば、あまりにも日持ちがしない海産物。
きっと「もったいないなぁ」と誰かが思ったのでしょう・・・
乾物の起源は縄文時代とも言われていますので本当のところ
は分かりませんが、「もったいないなぁ」の心が起源だと
思えてなりません。
自然界を敬い、そこからの恵みに感謝して有難くいただく心
こそ日本人の美しい姿だと思いますし、そこから生まれた
言葉が「もったいない」なのだと思います。
ハレの食事(行事食)とケの食事(日常食)
「旨み」と言う「味」についての話題が多い「出汁」ですが、
旨み成分はアミノ酸という「タンパク質のもと」がたっぷり
含まれた飲み物が「出汁」なのです。
アミノ酸のサプリメントが一時期流行し、今もいくつかの商品
が販売されていますが出汁は天然の食材から抽出されたサプリ
そのものと言っても過言ではないでしょう。
魚介類やキノコ類から抽出された天然のアミノ酸を毎食、いただく
事でカラダの成長や補修がきちんとなされるわけです。
しかもタンパク質を一旦消化してアミノ酸に分解する手間が
ありませんのでその分カラダにもやさしいわけです。
そういう観点で「出汁」を見た時、一番だしを取ってお役御免
ではそれこそもったいないですよね・・・
出汁がらにはまだまだたっぷりと栄養成分が残っているのですから・・・
行事食などの「ハレの食」の時は「味」優先でおもてなし
することが大切だと思いますが、日常食である「ケの食」では
中身優先が良いと思います。
今年からプロ野球ソフトバンクホークスの監督になられた工藤公康氏は
現役時代からくたくたに煮出した出汁が食卓の基本だったそうです。
昆布・鰹節・干しシイタケをくたくたに煮出したものを冷蔵保存
してどんな料理にも使うのだそうです。
もちろん、出汁を使い切ったあとの出汁がらも料理として
食卓に登場します。食材に含まれた栄養成分を丸ごと無駄なく
食べきる食事が長い現役生活を支えてきたのでしょう。
最近では「水出し」や「昆布水」といったものが主流になって
いるようで、仕込みも簡単!味も栄養価もバッチリ!!
出汁を使い切った出汁がらは料理で再利用!(^^)!
がカンタンにできる方法があるそうです。
これなら忙しい主婦の方でも安全で安心な天然素材で手間なく
出汁の効いた料理が出せますね。
管理栄養士・栄養士さんが行う食事指導に参考になれば嬉しいです(^^)/
最後に参考書籍をご紹介します。
・工藤公康 粗食は最強の体をつくる!/三笠書房・幕内秀夫著
・「水だし」さえあれば和食はかんたん!/主婦の友社・武藤裕子著
・ノンオイル&10分でできる昆布レシピ95/ジェイティビィパブリッシング・山脇りこ著