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日本のこころ、和食の智恵 2-5 ~二十四節気の『夏』と『5月』について④~

2015年06月05日

皆さん、こんにちは。
和食の知恵を1300年使われてきた『季節』と『暮らし』の《目印》である
二十四節気と七十二候を参考に紐解いていく和食の知恵シリーズ2ndステージ。

今月は日本の夏(5~7月)の初夏、5月の二十四節気と七十二候について解説を進めて参りました。今回は小満の後半時期、「紅花栄(べにばなさかう)」と「麦秋至(むぎのときいたる)」についてお届けします。

そして、その中に脈々と息づく「食生活」「食文化」に光をあてて現代の日本人にとっても活用出来る「食の知恵」「生きる知恵」を浮かび上がらせて行きます。

『初夏』、5月の二十四節気 おさらい

5月は『初夏』
二十四節気では
5月5日~20日頃を『立夏(りっか)』
5月21日~6月4日頃を『小満(しょうまん)』
と目印の言葉を当ててあります。
『小満』はこんな季節です・・・

『小満』 「小満」とは万物が次第に長じて天地に満ち始めるという意味。
     蚕が眠りから目覚めて桑を食べ始め、麦の穂も伸び、麦刈や田植え
     の準備が忙しくなる時季。
     梅雨が大地を潤し始める頃であり、完全に夏の季節となります。
     爽快感に満ちて心も身体もフル稼働。仕事に勉学に励むことが出来ます。
     この時季の食材は疲労回復や体調を整えるビタミン類が豊富なものが多くなります。
     魚介類ではカツオ、野菜ではらっきょうやみょうがといった「薬味」になる
     食材が、そして果物では梅、メロン、さくらんぼなどなどビタミンの豊富な
     食材が私達の生活を支えてくれます。

『初夏』、5月の二十四節気と七十二候

◇「立夏(りっか)」の七十二候

・初候:蛙始鳴(かわずはじめてなく)5月5日頃
蛙が鳴き始める頃。水田の中をスイスイ泳ぎ、活発に活動を始めます。
「かわず」は蛙の歌語・雅語。

・次候:蚯蚓出(みみずいずる)5月10日頃
みみずが地上に出てくる頃。畑土をほぐしてくれるみみずは、動き始めるのが少し遅めです。
・末候:竹笋生(たけのこしょうず)5月15日頃
たけのこが出てくる頃。たけのこは成長が早く、一晩でひと節伸びると言われています。

◇「小満(しょうまん)」の七十二候

・初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)5月21日頃
蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃。蚕がつむいだ繭が美しい絹糸になります。

☆次候:紅花栄(べにばなさかう)5月26日頃
紅花の花が咲きほこる頃。紅花は染料や口紅になり、珍重されました。

☆末候:麦秋至(むぎのときいたる)5月31日頃
麦の穂が実り始める頃。「秋」は実りの季節を表し、穂を揺らす風は「麦の秋風」。


「紅花栄(べにばなさかう)」と「麦秋至(むぎのときいたる)」に息づく和食の知恵

◇「紅花栄(べにばなさかう)」5月26日頃~

紅花の染料や食用油を取るために栽培されるベニバナはエジプト時代から染料として利用されていました。日本では万葉集に既に『末摘花(すえつむはな)』として紅花が登場しています。

はじめに橙色の花をつけはじめ、日が経つにつれて濃い紅の色に変わっていきます。一面の紅花畑は夏の風物詩とも言えるでしょう。


◇「麦秋至(むぎのときいたる)」5月31日頃~

新緑に囲まれた中、たわわに実った黄金色の麦穂が風に波打つ時期。季節はまだ初夏なのに麦は一足先に「麦にとっての収穫の秋」を迎えます。梅雨入りも迫り、稲や他の作物の世話が忙しい時期の麦の刈り入れは多忙を極めます。



◇旬の食材
・野菜:さやいんげん
・魚介:きず、黒鯛、蝦蛄
・その他:じゅんさい、さくらんぼ

◇和食の知恵
〈さやいんげん〉
・栄養素:カロチン、ビタミンB1、B2、カリウム、食物繊維、カルシウム
・効用:スタミナをつけて、疲労回復(アミノ酸のひとつのアスパラギン酸、ビタミンB1、B2)
高血圧予防(アスパラギン酸)便秘解消(食物繊維)などが期待出来る

※さやいんげんは、生育が早く、一年に何度でも収穫できるので、三度豆とも言うそうです。
ゆでたり、バター炒めにして洋食の付け合せにするも良し
味噌和え、胡麻和えなどの和え物にするも良し
汁の実などにも使えるので活躍の場には事欠かない野菜の1つです!


〈きす〉
・栄養素:良質なたんぱく質があり、脂質は少なめ。ミネラル類では特にカルシウムが豊富で、亜鉛やカリウムも摂取できます。 ビタミンD・Eや不飽和脂肪酸のEPA・DHAも含んでいるのが特徴です。

・効用:脂質が少なく低カロリーなので、この時期の健康管理、体調管理に相応しい食材と言えます。カルシウム・ビタミンD・マグネシウムは、骨や歯を丈夫にし、精神を安定させる効果があります。亜鉛が味覚障害を予防し、カリウムは、高血圧の予防に働きます。EPAがコレステロールや中性脂肪を減らし、DHAが脳の働きを高めます。


江戸時代から天ぷらには欠かせない「きす」は「海のアユ」と呼ばれる美しい魚。
脂が少なく柔らかで上品な味の白身は、塩焼きや刺し身、天ぷらやフライに適しています。


〈さくらんぼ〉
・栄養素:糖質のほか、カリウムやカロチンが豊富です。さくらんぼは、果物の中で鉄分の含有量がトップクラス。また、カロチンはビタミンAの母体となるものですが、これも、りんごや桃にくらべて4~5倍も含有されています。鉄分がひじょうに多く含まれており、貧血体質の改善に効果があります。

・効用:カリウムはナトリウムとバランスを取りながら血圧が上がり過ぎないようにコントロールしてくれるミネラルの1つです。カロチンが母体となって作られるビタミンAは神経伝達などに大切なビタミン。鉄は酸素を運ぶ赤血球の成分となりますので貧血ぎみの人は、さくらんぼの季節には、たくさん食べてほしい果物のです。

夏、暑さがじわじわと厳しくなり活動量が増えるに伴って汗で水分とミネラルが不足する時期です。こうした時期に燃料になる糖質と体の調子を整える各種ビタミンとミネラルの多い食べ物はこの時期の健康管理・体調管理に大変重要な役割を担ってくれます。


和食はこうした季節の食材を上手く取り入れ、味的にも栄養的にも組み合わせを上手にして日本人の心とカラダを支えてきてくれた食事の形だということが改めて分かってきます。