ショクライフTOP > 栄養士の知恵袋 > 「食育」という言葉
「食育」という言葉
2015年05月18日
「食育」という言葉が注目をあびるようになってから
どのくらい経つでしょうか。
記憶に残っているトピックスとしては平成17年の「食育基本法」ではないでしょうか。
当時はメディアも行政も学校も企業も、ありとあらゆる団体が「食育」を
掲げ国民運動として様々な施策を実行していたと思います。
最近でも「食育」という言葉は耳にしますが、当時に比べるとずいぶんと
下火になっていますね。
制定からちょうど10年経った今、「食育」という言葉の
振り返りをしてみてはいかがでしょうか。
「食育」という言葉を使い始めたのは誰?
服部幸雄さん?それとも小泉元首相?
いいえ、「食育」という言葉は今から約100年前の明治時代に活躍した
食医の石塚左玄と、小説家の村井弦斎が使い始めたとされています。
こんなにも前から「食育」=食の重要性は認識されていたのです。
石川左玄が提唱した「食養道」の中で
「体育も智育も才育も、すべては食育であると認識すべき」と記していて
村井弦斎は新聞連載小説「食道楽」の中で
「小児には徳育よりも智育よりも、体育よりも食育が先。体育、徳育の根源sも食育にある」と記しています。
食育ってそもそも何なのか?
内閣府のホームページでは以下のように位置づけされています。
① 生きる上での基本であって、知育、徳育および体育の基礎となるべきもの
② 様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し
健全な食生活を実践することができる人間を育てること
100年前に石川左玄、村井弦斎が唱えていたことと結局同じことですね。
昔から「食」の大切さを認識していたのにも関わらず
時代の流れとともに大切な何かが忘れ去られてしまう…
これってとても悲しいことだと思います。
ぜひ、管理栄養士・栄養士という食の専門家としても、「食」に関する
大切なコト・モノは次世代につなげていけるよう伝道師のような
働きを一人でも多く担ってくれることを願います。
食育基本法ができた背景
・「食」を大切にする心の欠如
・栄養バランスの偏った食事や不規則な食事の増加
・肥満や生活習慣病(がん・糖尿病など)の増加
・過度の痩身志向
・「食」の安全上の問題の発生
・「食」の海外への依存
・伝統ある食文化の喪失
(内閣府ホームページより抜粋)
どれも本来は普通にできたことだったかもしれませんが
現代ではそれが不可能となってしまっていますね。(残念ながら…)
時代が便利になる一方、実は失っているものも多かった、というのが
この問題点の羅列を見てもわかるような気がします。
食の専門家として、人の原点である「食」の重要性を
ぜひ1人1人が身近な家族や友達、そしてその周りの方、仕事へと
広げていける活動をしてもらえればと思います。
まとめ
食育基本法の制定により、「食」への関心は今まで以上に高くなっているのは
間違いありません。メディアでも健康情報があふれています。
ですがこのままでよいのでしょうか。
食の情報が自由自在に選べる今、ビジネスとして「食」を扱うメディアや書籍
様々な団体はキャッチ―な文言を売りに、メリットを誇張していたりと
様々な手法で健康を手に入れたい個人にアプローチしています。
正しい栄養学、正しい知識が根底にあってこそ、
その中から正しい情報を選べるわけですが、
その基礎がないままに情報に振り回されている方が多くなっていると
感じる昨今、
いよいよ私たち管理栄養士・栄養士の出番ではないでしょうか。
もっと栄養士が身近に寄り添える社会が実現できるよう
1人1人が今一度「食」の原点に立ち返り、正しい「食育」を
伝えていける環境が1日も早く作れればと思います。