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《栄養士☆成功事例インタビュー》管理栄養士 杉本恵子さま “あなた(栄養士)自身”が【健康の発信基地(ヘルシーピット)!!】第三部

2016年08月19日
“あなた(栄養士)自身”が【健康の発信基地(ヘルシーピット)!!】
~栄養士の仕事がしたくなくて入社した『百貨店』が教えてくれた「栄養士が必要とされる領域」と「活躍できる自分の磨き方」(第三部)~
栄養士☆成功事例インタビュー第4回目は株式会社ヘルシーピット代表取締役社長の杉本恵子さんの内容をお届けしております。第一部では、栄養士の仕事がしたくなくて、入社した百貨店で待っていた《人事部》での栄養士業務について。第二部では、係長の昇進試験がきっかけで日本の百貨店では初となる「健康プラザ」という売り場を生み出し、軌道にのせる活躍を果たして行く杉本先生についてお届けしました。
第三部では杉本先生が「健康プラザ」を運営することで『栄養士が社会から求められる時代が来る』と確信し、その時のためにと設立した株式会社ヘルシーピットの具体的な活動内容について伺いました。ご期待下さい!
改めて杉本先生のプロフィールを確認しておきましょう。
・相模女子大学食物科を卒業後、大手百貨店の健康管理室に勤務。
・栄養士として従業員の栄養相談・食事指導をしながら「健康プラザ」という売場づくりを成功へと導く。
・1991年、株式会社ヘルシーピットを設立し代表取締役に就任。
・「食事」「運動」「休養」の3点から、1人ひとりに適した健康づくりを提唱し実践している。
・その活動は、企業・健康保険組合が行う社員の健康づくりのコンサルティングやサポートを中心に、出版・新聞・雑誌などの執筆活動、全国各地での講演活動、ラジオ・テレビ出演など多岐にわたり活躍中。
・その中でも、誰でもが簡単に毎日実行できる栄養バランスのとり方を分りやすく解説した「杉本恵子の食材5色バランス健康法」が多くの方々から支持を獲得。
・また、健康で明るく生き生きと生活できる社会を目指し、全国の管理栄養士・栄養士の育成活動を推進している。日本クリエイティブダイエティシャン協会を設立し栄養士再教育をスタートしている。
ヘルシーピットの事業内容を説明される杉本先生!
事業一つ一つの思いについて語る杉本先生
江口先生のコメントに聞き入る杉本先生と麦島コンサルタント
◇健康発信基地【ヘルシーピット】の5本柱
※今回も学習院女子大名誉教授の江口泰広氏とショクライフコンサルタント麦島健生との対談形式でインタビューを行いました。臨場感を大切にお届けしたいと考え、対談形式の構成となっております。〈編集部〉
江口先生:
ヘルシーピットさんの名前の由来ですが、「ヘルシー」は「健康」ですよね?「ピット」は?
杉本先生:
「ピット」には「核」「基地」「集約」と言う意味があります。私のイメージとしては、レースのピットインのピットです。『健康を発信する基地』にしたいと考えてこの名前にしました。
事業は次の5つを柱にして展開しています。
1 商品開発事業
⇒食品メーカーの新商品開発とそれに伴う販促企画・セブンイレブンやスーパーの商品開発・健康レシピの監修、健康レシピを使った販促企画
2 デイサービス事業
⇒食事に重点をおいたレストランディTEA倶楽部成城(通所介護事業所)運動に重点をおいたアクティブディ成城(通所介護事業所)
⇒これら2つのデイサービスを管理栄義士・栄養士が中心になって運営
3 ミールクリニック事業
⇒食の専門家である管理栄養士・栄養士(my栄養士)が 一緒に伴走する食生活改善プログラム
4 コンテンツ事業
⇒病気を予防し健康を維持増進する為に、食生活の改善に役立つ情報やレシピを、出版物、動画
などで提供
⇒「杉本恵子の食材5色バランス健康法」を題材に、食生活改善教育セミナー(老若男女対象に10000件以上実施)全国で開催
⇒健康セミナー企画立案実施(各社健康保険組合・企業・市町村を全国にて行う)
5 人材育成事業
⇒日本クリエイティブダイエティシャン協会(JCDA)を運営し、創造性豊かな食教育を提供できる管理栄養士・栄養士を組織化。地域密着型の食教育・健康増進活動に関わる人材教育事業を展開
⇒育成した人材を通じて国民のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上と管理栄養士・栄養士の地位向上に寄与することを目指す
江口先生:
マーケティングをとても重視されていますね。さすが百貨店での経験が生かされています。
杉本先生:
「こんなサービスがあったら良いな」「必要なのに、無いなら作ってしまおう」
というのが私の基本的な発想なのです。
デイサービス事業は私自身の体験・経験が基になって出来上がった事業です。私の母が15年前に入院した際に、医療ミスによる脳梗塞が起こり右手足麻痺と失語症が残ってしまいました。7ヶ月の入院で鬼の様な娘になり、ある程度まで改善させましたが、当時は年間100回以上の講演会と社長業で日本国中を飛び回る日々です。退院した母を自宅で留守番をさせるのではなく、デイサービスに通ってもらいたいと思いましたが、私も母も納得できる施設がどこにもありません。
高齢者を別の生き物の様に扱う施設を目の当たりにした時、こんなところに入れるなら自分で作った方がいいと思って作りました。私自身、高齢者施設のコンサルティングもしていましたが、食事の点では施設の栄養士やケアスタッフとは毎回戦っていました。刻み・とろみ食・ソフト食・ミキサー食が当たり前の様にだしている栄養課の課長である管理栄養士を課長職から解いたこともあります。その時は、若い調理師を課長にしました。
色々な高齢者施設を廻ってみても、高齢者の皆さんが美味しいと言って食べている施設がありません。黙ってまずいとも美味しくないとも言わず、下を向きながら「餌」を食べさせられているお客様(高齢者)を見て、同じ栄養士として恥ずかしい悲しい気持ちと申し訳ない気持ちで一杯でした。
私達の身体は毎回食べる食事から出来ている。ある一定の歳を過ぎると「餌」を食べさせられる。「餌」では元気で過ごせるはずはない。私が母のために作る通所介護事業所は「誰が食べても美味しい、また食べたい。そして元気になる」と皆さんが言ってくれる通所介護事業所(ストランディTEA倶楽部成城)は栄養士達で作ろうと思い設立しました。
なぜ、栄養士なのでしょう。栄養士は韓国・中国では昔から食医と言われる様に食べる事のトップです。料理を作る事から栄養学の知識を持ち合わせた栄養士が行うべきビジネスだと私は、思っています。そして15年経ちますがこの考えに間違いはありません。なぜかというとレストランディTEA倶楽部成城は行列のできるデイサービスだからです。お客様やご家族、地域の皆様からご評価を頂かなければ今はありません。
若い料理ができない栄養士さん達が一生懸命作る姿に、お客様達は喜ばれています。私はいつも感じていることが1つあります。弊社のスタッフもおばあちゃん達もお互い感謝の気持ちを持ち続けている。という事です。
この様な一つ一つの経験から「こういうサービスがあるべきだよね」と考え、無いなら作ってしまおう!それを事業という形に仕立ててきた25年でした。
◇栄養士の再教育機関「日本クリエイティブダイエティシャン協会」と活躍の場としての『ミールクリニック事業』
江口先生:
『これからの世の中に必要とされる栄養士を育成すること』と、『栄養士の活躍の場を作る』というのが株式会社ヘルシーピット設立の動機だったと思います。その中核を担っているのが「日本クリエイティブダイエティシャン協会(JCDA)」での栄養士育成事業であり、そこで育った人材の活躍の場が「ミールクリニック事業」という位置づけになるのでしょうか?具体的にはどの様な事を展開されているのでしょう?
杉本先生:
日本クリエイティブダイエティシャン協会による栄養士の再教育は今から20年くらい前からスタートしました。現在、会員は約130名の精鋭部隊となっています。江口先生のおっしゃる通り、JCDAに在籍している方々にミールクリニックの担当者として仕事をしてもらっています。全国にいる栄養士が「my栄養士®」として食事からの健康を提唱し食事からの健康をサポートしています。
ミールクリニックは、スマホなどで食事内容を撮ってその写真を送ってもらい、その内容に対して支援をする事業となっています。
2015年9月に日本プライマリ・ケア連合学会でドクターと一緒に合同研究をして学会発表もさせていただきました。ミールクリニックこそが、栄養士に必要な活躍の舞台だと思っています。
もともと、弊社も特定保健指導などを行っていました。しかし、やればやるだけお金がかかってしまうし、対象者の改善が見えにくいこともあり、管理栄養士のモチベ―シャンも低下していくのが目に見えて分かってきました。真面目な管理栄養士さん達は自分を責めることもあり、弊社自体もビジネスにならない、これは私のやるべきことではないとすぐに中止をしました。「楽しくない仕事はしない。」これも私の考えです!!
そうした特定保健指導での経験を教訓に「自費にして、改善したい人だけが受けられるサービスを」と考え、色々と試行錯誤を重ねてきました。その結果として誕生したのがこのミールクリニック事業です。
学会発表では、29名に支援をして29名全員に改善結果が出ました。「HbA1c」「体重」「腹囲」それぞれが改善されたのです。ドクターの皆さんからは注目を浴びています。
江口先生:
29名中29名全員というのは素晴らしいですね!どのような方法で実施されたのですか?
杉本先生:
とってもシンプルなスタイルです。対象の方は「ご自分の食事の写真を撮って送るだけ」。そして、栄養士は「その写真を見て、コメントを送る」それだけです。面談希望がある場合は、スカイプを使用したりしました。
江口先生:
へっ、写真を撮って送るだけなのですか!
麦島コンサルタント:
献立などは渡したりとかしないのですか?
杉本先生:
何もしません。基本的に写真に対してコメントするだけです。3か月間(12週間)に24回栄養士がコメントするということだけ決めました。24回のコメント方法は対象の方々の意向に応じて対応することにしました。先に集中する人、まんべんなくコメントするなどです。すべてお客様に合わせます。お金を払ってくれるお客様ですから。お客様は神様です(笑)写真はいつでも何枚でも送って良いことにしました。この方法なら、海外出張でもスマホが使えればそれで対応可能となります。
江口先生:
写真だけでわかるのでしょうか?
杉本先生:
わかります!!食生活の中の問題点がしっかりと分かるようになります。栄養価計算はしませんが、食事内容の写真にはしっかりと「習慣」が映しだされるのです。その食生活に潜む問題点は何なのか?そしてその問題点を改善するにはどの様な方法があるのか?その提案が出来るように日本クリエイティブダイエティシャン協会で再教育していますので・・・かなり厳しくビシバシ教育します(笑)
ある方はご飯の写真の横に、菓子パンが並ぶ写真が毎回送られて来ました。「菓子パン好きなのですか?」と聞くと、「好きです」。と言うお返事でした。それに対して「この時間にこれを食べるのはちょっと多いかな?」「もう少し早い時間に食べたらいかがでしょう?」と栄養士がコメントを返しました。菓子パンの事を聞いたのは1回だけだったのですが、すると、どうでしょう。その後、食生活が徐々に変化して「菓子パン」を食べなくなって行きました。そうしたらみるみる体重が減りました。たぶんお客様もわかっていたのです。自分が痩せられないのはこの菓子パンだと・・・でも栄養士には1回聞かれたがそれ以降は注意されない・・・行動変容は自分しかできませんね
この様に、自分自身では分からない「問題点」が栄養士によって「見える化」されることで、対象の方は自分自身の食生活を変えていくことが出来るようになるわけです。
麦島コンサルタント:
この仕組は画期的ですね!しっかりと訓練され、再教育された管理栄養士が担当しているからこその結果だとも思いました。食生活を見直したい方とその方の「問題点」を正確に「見える化」し、適切な「改善方法」を提案できる栄養士が居ることで成り立つこのサービスは日本の多くの健康問題を改善していく力があると感じました。将来性をとても感じるサービスですね!!
☆杉本先生の(第三部)はここまで・・・
(第三部)では株式会社ヘルシーピットの具体的な事業内容を語っていただきました。
【健康発信基地】として25年かけて作り上げてきたものが一つ一つ実り出してきている事実を伺い、明るい希望を感じさせていただきました。
杉本先生ご自身が自らの体験に基づき「こんなサービスがあったら良いのに」というところからスタートしているところに大きなポイントがあるように思います。自分自身が一人のお客様として感じる思い、「あったら良いな」と思う心を大切に事業を育てていくところが経営者杉本恵子の強みだと感じさせていただいた内容でした。
さて、次回はとうとう完結編となります。日本クリエイティブダイエティシャン協会で行っている栄養士の再教育の部分を中心にこれからの時代に必要とされる栄養士像について語っていただきました。ご期待下さい。